病気と暮らしている方は、健康な人の気軽な発言に、困惑したり、怒ったり、傷ついたりすることがあると思います。
今回の記事は、そういった発言を集めて紹介する記事です。
これは、「健康な人に傷つけられた恨みを晴らしてやる!」という記事ではありません笑
愚痴でもないし、文句でもありません。
私たちは、病気に関わらず、みなそれぞれ違っています。 どんな人も、それなりに心地よく暮らしていくためには、私たちは、「互いに理解はできないし、理解しようとは思わなくても、故意に傷つけたりしないし、傷つくかもしれないことはしない」という工夫が必要です。多分、みなさんも日頃からやっていらっしゃいます。
「病気と暮らす」というのは、ただ「病気である」というだけではありません。生活のあり方や、人生の優先順位に影響を及ぼします。それは、価値観の変化そのものです。
その価値観の変化によって、健康な間は全く気にならなかった些細な発言に腹が立ったりします。
この記事は、全ての人(病気の本人も含めて)が、病気の人の考えを少しでも理解できるような素材として書きました。
病気と暮らしている方と、健康な人が、不必要な衝突をせずに、ただ平和に一緒に過ごせるような、そんな未来のための記事です。
病気と暮らしている方が不用意に傷つくことがあるということは、病気以外の理由で価値観が異なる人たちも、同じように傷ついているということだと思います。
全ての人が、無駄に傷つけられることなく、穏便に暮らせる社会になればいいですよね!
病気と暮らしている人を傷つける7つの発言
1.無知
「あぁ、〇〇病ね。大したことないんでしょ?」
「『〇〇病です』って嘘つく人多いらしいね〜」
「化学物質が原因なんでしょ?テレビでやってた」
多分、この言葉が全く無関係の赤の他人から発せられても、腹が立つだけで、乗り越えられると思います。しかし、家族や親しい友人から発せられたら、きっと立ち直れないと思うのです。
自分にこれっぽっちも関心を持っていないということが、感じられるからです。
お願いできるとすれば、どうか一度だけでいいから、身近な人の病気をググって、医学的に正確な情報を調べてほしいと思います。それは、愛情を伝える簡単な方法です。
2.奇跡の治療法
「〇〇病は、この治療法で治るらしいよ〜」
「✕✕病はこの治療法で治るらしいから、〇〇病にも効くんじゃない?」
この言葉は、悪意ではなく優しさから発せられていると私は信じています。しかし、あまりにもトンチンカンな時は、腹が立ちます。
勧められたアホみたいな物をリサーチして一喜一憂するのは、心がとても疲れます。
奇跡の治療法をおすすめするときは、どうか医学的なエビデンスを添えて、患者さんが自分でリサーチしなくてもいいような状態にしてあげてほしいと思います。
3.生き方の押しつけ
「笑顔になれば、病気も逃げていくよ!」
「日々感謝だよ!」
「こう考えれば、辛いこともすぐ乗り越えられるよ」
多分この言葉をかけてくる方は、ご自身の中でも辛い出来事を乗り越えた経験をお持ちで、その叡智を持って、誰かを助けたいと考えていらっしゃるんだと思います。それ自体は尊いことです。
残念ながら、人間が一人ひとりあまりにも違っていて、誰かにとっての解決策は、誰かにとっての毒になることがあります。
間違っている人生というものがないように、間違っている生き方というのも、まあ極めて稀なのではないでしょうか。
病気と暮らす上で、唯一頼りになるのは自分自身の哲学です。他人の哲学で病気を乗り越えていくのではありません。自分自身で学ぶしかありません。それには、時間がかかります。
もし、時間がかかってでも、病気の方に哲学をおすすめする情熱があるのであれば、一度に全てをおすすめするのではなく、相手がちゃんと飲み込めるようなひとくちサイズにして伝えていただけると、伝わりやすいと思います。
4.被害者に対する攻撃(victim-blaming)
「もっと生活習慣を改めなきゃダメだよ」
「病気になるのは、生き方に問題がある証拠」
こういった発言をされる方は、実際は、自分自身が病気になるのがとても怖い方なんだと思います。
だから、「病気になった人は、その人に何か問題があった・悪いことをしたから病気になった」と思いたいのではないでしょうか。そうでなければ、健康的な生活をして、良いことばかりをしている自分自身も、病気になる(不幸になる)可能性があるということになってしまうからです。
近年、性犯罪被害者に対する攻撃は不適切である、という認識がだいぶ共有されてきて、「性犯罪にあったのは、セクシーな服を着てたからだろう」という発言はものすごいバッシングを受けるようになってきました。
しかし病人に対しては、例え生活習慣との関係が医学的に立証されていない病気であっても、病人の生活習慣を攻撃することが日常的に行われています。 これは今後、変わっていくのではないでしょうか。
こういった発言をする方は、患者をむやみに傷つける目的は何なのか、一度ご自分の胸に手を当てて考えていただきたいと思います。
5.感情・認識の否定(gas-lighting)
「毎日寝てるのに、辛いわけないよ」
「痛いって言っても、そんなに痛くはないんでしょ?」
「病気になったからって、そんなに悲しむことじゃなくない?」
誰かの感情を否定して、なかったことにしたり、そのように感じるのは間違っていると説得したりすることを、英語では「gas-lighting」といいます。
例えば、心のない発言をしてしまったときに、「傷つくそっちがおかしい」と言い返したりすることですね。
このような発言をされる方は、おそらく目の前で繰り広げられる悲しみや苦しみに対して、第三者ながら心を痛めていらっしゃるのではないでしょうか。それゆえに、誰かの感情を否定することで、「なかったこと」にしたいのではないでしょうか。
非常に心ない言葉ですが、きっと心の中には優しさがあるのだと思います。
その優しさを、もっとわかりやすい形で相手に伝えたほうが、相手の悲しみや苦しみが和らぐことになり、結局心の痛みも減ります。
感情を否定されると、人間は自分自身を信じられなくなり、悲しみや苦しみがより深まり、結局あなたの心はより痛みます。逆効果です。
6.マウンティング
「病気の症状で疲れがひどい?いや〜自分も最近長時間残業でめっちゃ疲れてんだよね〜」
「病気の症状で眠れない?いや〜自分も最近3時間睡眠で頑張ってんだよね〜」
「闘病のストレス?いや〜自分も今の職場めっちゃストレス溜まるんだよね〜」
病気の症状としての、易疲労感、不眠、また病気を受容する過程のストレスは、根本的に健康な人が感じる疲労、不眠、ストレスとは全く異なっています。それは、レベルが違うということ以上に、全くタイプが違うことも多いと思います。
こういった発言をされる方は、多分ご自分よりも辛い状況の方を見ると、自分の努力が不足しているように感じてしまうのかもしれません。自分は今、十分頑張っているのに、自分よりもっと頑張っている人を見ると、焦ってしまうのかもしれません。
そういう方には、別に競争をする必要はないということをお伝えしたいと思います。
病気における症状と、健康な方の日常生活で感じる様々な辛さは、全く同じ次元にはありません。玉入れと大玉ころがし並に違っています。
玉入れと大玉ころがしに、どっちが優れているとか劣っているとかないように、病気における症状と、健康な方の辛さは、どっちが大変とかもないです。
人間が一人ひとり、自分自身の人生の辛さに自分で対応する、ただそれだけだと思います。
(おまけ)7.恐怖
「いつまでも健康でいられるように、これをしましょう!」
「こんな病気になってしまうかも!怖〜い!」
これはおまけです。私だけの意見かもしれません。
健康でいることは素晴らしいことです。しかし、病気を「人生の終わり」のように捉えて、恐怖感を煽るのは、何だか悲しいなとも思います。だって、その「人生の終わり」の状態で生きている人が山ほどいるんです。
「こんな病気になってしまうの!?コワーイ!!」と笑顔でタレントがはしゃいでいる番組がとても嫌いです。悲しくなります。
私は、他の人が逃げ出すような状況に陥っているのでしょうか。それは私の責任だったのでしょうか。避けられることだったのでしょうか。
健康番組が役に立っているのはわかります。様々な病気を知ることで、病院を早期に受診する効果があるでしょう。 しかし、これは私のための番組ではないなと思います。 「病気は頑張れば避けられる、病気は怖い」という価値観で作られている番組から、私が学ぶことはないなと思います。
おわりに
みなさんも、こういった発言を受けたことはありますか?どのように感じましたか?
是非教えてくださいね!
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