みなさんこんにちは。
今日は、非常に奇妙な取り組みをしたいと思います。この記事は、誤解を生んだり、誰かを不快にさせたり、共感できなかったりするかもしれません。しかし、この記事を書くこと以外では生み出せないような、インパクトを生むこともできるかもしれない、と考えています。
今日は、IgA天疱瘡の患者である私(ジョー)と、成人アトピー患者である私の恋人のケン(仮名)が、「きれいな肌」とは何なのか、語ってみたいと思います。
なぜ、この記事を書くの?
みなさんの周りには、病気の方がいますか?その方と、哲学的な話はできますか?
私は、元々アトピー患者であるケンと付き合っていたのですが、途中でIgA天疱瘡を発症しました。全く予想もしていなかったのですが、突然、異なる皮膚病のカップルが爆誕したことになります。
私がIgA天疱瘡を発症したことで、お互いの人生観について、より深い話ができるようになりました。同じように「皮膚病」のカテゴリにある病気でも、こんなにも異なる価値観を持つことを知りました。それは、病気の違いという以上に、病気と過ごしてきた年月や、人生や、人格の違いでもあります。
私たちがそれぞれ、自分の人生について感じていることが全く違っているように、みなさんもそれぞれ、同じ病気でも違う病気でも、異なることを感じているはずだと思います。
難病の患者さんには、毎日寝たきりの方から、普通に8時間仕事+残業をこなしていらっしゃる方まで、様々な方がいらっしゃいます。
「難病なので、寝ているだけでも疲れきっている」方と「難病なのに、残業して疲れ切っている」方が、日常生活の悩みを打ち明けあっても、ちょっと刺々しい会話になってしまうのではないか、と思います。
しかし、気持ちや人生観ならどうでしょうか。それぞれがどんな気持ちなのか、それなら共感し合うことができるのではないでしょうか。症状の程度や、病気の種類を超えて、話ができるようになるのではないでしょうか。
そういう話ができるようになれば、もっと人間はお互いに対して優しくなれるのではないか。患者さんたちの経験は、別の価値を持ち、健康な人の胸も打つのではないか。私はそう思っています。
なぜ、お前らみたいな軽症がこの記事を書くの?資格ないでしょ?
私も、私の恋人のケンも、病気としては軽症です。二人共、8時間+α勤務の会社員です。
病状が深刻であればあるほど、病気の経験を語る「資格」があるような感覚は、確かに私にもあります。「軽症なんだから、他の人に比べて大変じゃない」「ステロイド飲んでないから、他の人に比べて大変じゃない」というのは、理解しています。
「大変じゃない人は病気について知ってるように語るな」というのは、私もわかります。
しかし、私たちよりも重症なIgA天疱瘡の患者と、アトピー患者が忌憚ない意見を言い合える関係にあり、どちらかがブログを運営していて、この記事を書くアイディアを思いつく確率は、非常に低いとも思います。また、本当に重症な方は、情報を発信するような状態ではないでしょう。
私たちも一人の患者であり、人生に病気の章を持っています。私たちは、自分の難病の章について、ありのままを語る資格を持っていると思います。
この記事は、重症の患者さんの経験を決めつけることを意図していません。
IgA天疱瘡患者×アトピー患者が「きれいな肌」を語ってみた
注意
・この記事は、IgA天疱瘡患者全員、アトピー患者全員の意見を代弁するものではなく、あくまでも、個人的な感覚を述べているものです。
・二人の意見には差がありますが、病気による差だけではなく、性格、経験による差が大半だと思います。
・読者の皆さんの意見とも差があると思います。それは、病気の程度や種類の差だけではなく、皆さんの人生と私たち二人の人生が違っているということも、大いに影響していると思います。
Q. 日常的に、治療(予防)のためにしていることは?
ジョー:
薬(レクチゾール)を飲んで、水疱の形成を抑えています。軽症のIgA天疱瘡では、ステロイドの服用は不要なので、飲んでいません。
水疱ができたら、ステロイドを塗って、市販の絆創膏(白いやつ)で覆ってます。外出先で水疱が潰れると、服が擦れたり貼りついたりして痛いです。また、気のせいか知らないけど水疱は大変膿みやすく、傷の治りが遅い気がする。
頭皮に水疱があるので、ステロイドローションを塗っています。最近、洗髪を1日2回から1日1回にできるようになり、だいぶ余暇が増えました。
ケン:
毎日シャワーを浴びて、全身に保湿薬を塗っています。身体は石鹸で洗わずお湯を浴びるだけです。飲み薬ももらっていますが、あまり効果を実感できないので、サボることもあります。
常に痒みがあるので、眠っているときも体をかいてしまいます。眠っているときは、力の加減ができず、皮膚が破れるまでかいて、血が出てしまうことがあります。眠っているときは、ミトンやビニール手袋をはめて、傷を作るのを防止しています。
今は非常に症状が落ち着いています。症状自体は、幼少期からありました。中学校のときは、全身が粉まみれになるほどの乾燥が起こっていましたが、今はそういうことはありません。
Q. 自分の病気について、どう思う?
ジョー:
頭皮に炎症があったときは、頭から公衆トイレの臭い(マジで駅のトイレの臭い!)がしたり、滲出液で服が汚れたり、かなり衛生的にぶっ壊れていました。髪が長いので、周りにはそんなにバレてないんじゃないかとは思ってましたが、額に垂れてくる液をティッシュで拭ったりするのは、割と奇行寄りの何かですからね。
唇に水疱ができて、唇がとんでもなく腫れちゃったりして、顔が変わったりもしました。
ただ、元々そんなに人の目を気にするタイプではないので、そんなに恥ずかしいとかはなかったかもしれません。元々、開き直りが早い性格だと思います。
それより自分の不快さの方が大きかったです。症状が出ると、それに一々対処しなきゃいけないのですが、部位によって塗る薬や、対処法が違ってるのが最高に面倒です。
私にとってIgA天疱瘡を一言で言うと、「めんどくさい病気」です。
ケン:
僕にとってのアトピーは、「恥ずかしい病気」です。
肌が炎症したり、乾燥して粉がでると周りの目が気になります。
また、非常に皮膚が痒くなる病気なのですが、葬式の時とか、すごく静かな場所で他の人との距離が近い時は、「あいつ体をかいてるな」と思われるのが嫌で、かくのを我慢したりします。痒いのを我慢するのはとても辛いです。頭の中が「かきたい」でいっぱいになる感じですね。
人と違う見た目になること、人と同じ行動ができないことが、僕にとって、アトピーの一番嫌なところです。
僕は子供の頃からアトピーでした。周りが子供ばかりの時は、どうしても人と違うということが、深刻に感じられてしまいます。僕は子供の時、自分がアトピーだとは言えなかった。傍から見たら、一目瞭然だったとは思いますけど(笑) 気づかれたくない、隠したいと思っていました。
今は、自分も大人になって、周りの人も大人ばかりです。大人はアトピーくらい当然気にしないものだと思っているので、僕自身も、アトピーを前よりも恥ずかしいと思わずに良くなりました。
Q. 自分にとっての「きれいな肌」とは?
ジョー:
私にとっての「きれいな肌」とは、「私が病気の前に持っていたもので、病気が収まれば取り戻せるもの」と言わざるを得ません。
天疱瘡が治癒できない病気、というのは100も承知なんだけれども、今回、この質問を考える上で、実は心の奥底では「きれいな肌を失ったとは認識していない」ことがわかりました。
「まだ失ったとは限らない、綺麗になるかもしれない」と思いたい自分がいます。別に仕事で使ってるわけじゃなし、綺麗じゃなくてもいいじゃないか、と思うんだけど、謎の未練がありますね。そんなものより重要なものがいっぱいあるのにね。
ドラマや映画で「きれいな肌」が写った時には、「なぜこいつらは全く水疱がないんだ?リアリティはどこ行ったんだ?」と思いますね(笑)
ケン:
「普通に生活しても乾燥や炎症ができない肌」が、「きれいな肌」だと思います。自分がこういう肌を手に入れられるかどうかは、今後の医学の発展次第ですね(笑)
でも結果として、「きれいな肌」が手に入らなくても、気持ち的には大丈夫かなと思います。今は、とても症状が落ち着いてることもありますね。
・・・でも今の医学で、10万円払ったら治る治療法があるなら、すぐに払います(笑)
ドラマや映画で、きれいな肌が写った時は、「みんなと同じ集団の人だけど、自分はその集団には属していない」というように感じます。自分とは違う人種のように感じます。
ただ、「きれいな肌」=「健康」とは思いません。というか、僕は自分のことを「健康」だと思っています。辞書を調べたら、「健康」は「病気がないこと」らしいですね。じゃ僕は健康じゃないということになるけど、僕は誰かに「お前は健康じゃない!」って言われたら泣いちゃうかもしれない。そんなひどいこと言わなくてもいいじゃないですか。
Q. 今一番、不安なことは?
ジョー:
フレア(再燃)が起こって、現在治まっている症状がまたひどくなって、面倒な生活に逆戻りすること。「フレアが起こる病気なのだ」と言う点については、今も全く受け入れきれていません。こればっかりは、何度も繰り返して経験しないと受け入れられないと思います。
あとは、妊娠中に症状が悪化する患者さんがいるという論文を読むと、不安に感じます。
ケン:
アトピーが子供に遺伝しないかどうか、心配です(※アトピーはある程度遺伝性が確認されている。天疱瘡は遺伝しない)。
子供に辛い思いをさせたくないと思います。僕は元々ポジティブな性格なのもあって、そこまで深刻に思い悩んだわけではないです。しかし、子供時代に、人に変に見られているのではないか、と心配するのは辛いことです。
また僕は、自分の治療費を親に払ってもらうことに罪悪感がありました。なので、「病院に行きたい」と言いづらいこともありました。大人は、自分のお金で治療ができるので、気が楽ですが、子供は治療のイニシアチブを100%持っているわけではありません。色々と、悩むことが多いと思います。
自分の症状が悪化することについては、そこまで不安はないです。今みたいに良い状態の時はいくらでもあったし、逆に悪い状態の時もいくらでもありました。でも、そのまま単調増加でひどくなることはない、という経験則があります。自分の中である程度予想がついているので、あまり不安には感じません。
Q. 病気になったからこそ得られたものはある?
ジョー:
たくさんあります!最初に「天疱瘡の疑い」って言われた日から、毎日学びの連続です。多分、この病気にならなければ、恐らく私は一生「難病」というものに一切興味を持つことがなかったと思います。
これについては、別途ブログ記事も書きましたので詳しい説明は割愛しますが(笑)、今まで知らなかったこと、もっと知りたいこともたくさんあります。精神的に、かけがえのないものを教えてくれたと思います。
(参考)
ケン:
色んな病院の診察券ですかね(笑)
僕は、幼少期からずっと病気なので、自分の人格に病気がどういう影響を及ぼしたのか、観測することができません。僕の人生には、「病気じゃなかった頃」がありません。
アトピーという病気であることで、「病気の人の感覚がわかる」とか「皮膚炎の人に偏見がない」とか、確かに健康な人よりも理解していることもあると思います。でも、それは、アトピーじゃなかったら、気付けなかったことなのかというと、それはわかりません。僕ならいずれ、気付けたかもしれません。自分のポテンシャルに期待したいですけどね(笑)
Q. 相手の病気について、どう思う?
ジョー:
付き合いたての頃に、「俺はアトピーだけど、(付き合っても)大丈夫?」と聞かれたことを、私は今でも覚えています。そんなことを思わせるに至った周りの人に対して、強い怒りを覚えました。
アトピーが珍しい病気であろうとなかろうと、大人だろうと子供だろうと、どんな人も自分の病気に対して優しいフィードバックが必要だと思います。そういうことを通して、自分の病気への感じ方が形作られることも多いのではないでしょうか。
また、これは本人が気にしているかわかりませんが、患者数が多いので、アトピーを標的にした似非科学が横行するのは、大変だなと思います。本人は理系なので、腹が立つことも多いんじゃないかな。
本人は治したいと思いますが、私からすると、アトピーは既に人格の一つであるように感じます。他人の恐れや悲しみを直感的に理解したり、言語化したりする細やかな能力は、当事者だからこそじゃないのかなと思います。まあ本人のポテンシャルもあるかもしれないけど(笑)
アトピーであることによってなのか、関係ないのかはさておき、他人の私に皮膚病とは何たるか、人間の弱さとは何たるか、痛みとは何たるかを教えたというのは、偉業と言えるんじゃないかしら。
ケン:
健康だったのにある日突然一生治らない病気になったということを考えると、自分だったら人生に絶望すると思います。
病気になった初期は、辛いと思います。病気を受け入れるという事自体、時間が解決していく問題だと思いますから、初期はどうしても辛いと思います。
「病気が一生続く」というのは、やはりショックが大きいと思います。自分だったらしばらく元気が出ないと思いますね。
そういう意味で、本人が全然ショックを受けた感じがないのは、尊敬に値すると思います。・・・というか、ちょっとおかしいんじゃないかと思う(笑)
最後に
もし、同じように、異なる病気の人の考えをブログにまとめた方がいたら、是非私にも教えてくださいね!
はてなブログの方には、お題「違う病気の人が語ってみた」を設定しましたので、是非使ってみてください。