病気を抱える人たちは、こういう言葉をかけられることがあると思います。
・ポジティブに行こう!
・泣き顔は似合わないよ。笑顔になろう!
・つらいときこそ笑おう!
・前向きに考えていこう!
親切心から出てきたこういう「素敵」な言葉たちに、みなさんは何か返事をしなければなりません。 きっと、みなさんは、こう答えると思います。
「ありがとう!元気が出たよ!」
こういう「素敵」な言葉をかけてくれる方たちは、みんな根本的に 優しい方で、何か優しい言葉をかけてあげたいと思っているんだと思います。その優しさには感謝したいですよね。
でも、この「素敵」な言葉には、無理に従う必要はありません。
今日は、その理由を2つの実験で示したいと思います。
実験1
アナログ時計を準備してください。
時計の針を、6時ちょうどに合わせて、電池を抜いてください。
では、時計の短い針が12時を指すように、激励してください。
「12時の方を向こうよ!笑顔になれば気持ちも変わるよ!」
「12時になれば、幸せが自分から寄ってくるよ!」
「6時は似合わないよ!12時にしよう!」
時計の針は12時を指しましたか? 指さないとしたら、なぜでしょうか。
A. 電池がないから
時計だと当たり前すぎる話なのですが、人間も同じじゃないかなと思います。
一生治らない病気の診断を受けた時は、衝撃を受けて当たり前です。
衝撃を受けると、後ろ向きにもなるでしょうし、前向きになる活力が湧いてこなくて当たり前だと思います。
12時ちょうどをポジティブ(短針が上向き)、6時ちょうどをネガティブ(短針が下向き)とすると、あなたの時計の短い針は、6時で止まってしまって、電池が抜けてしまっているかもしれません。
活力を失ったあなたに、一瞬で前向きになれというのは無謀です。まずは、活力をチャージするのが先です。
実験2
実験1で使用した時計に、今度は電池を入れてください。
では、時計が12時を指すように、激励してください。
時計は12時を指しましたか?なぜ指さないのでしょうか。
A. まだ6時間経ってないから。
時計が、励ましの言葉によって6時間進んだりしないように、人間も、励ましの言葉によって突然全ての辛いことを忘れたりはしません。
一生治らない重大な病気のような、人生の重大事項を乗り越えるのには、当たり前に時間が必要です。
みなさんは一人一人、毎日できる範囲で、病気と何とか暮らそうと努力されていると思います。
そういう努力が、1秒ぶん、5秒ぶんずつ、時計の針を進めていけるはずだと、私は信じています。
私の時計は、もう長らく9時過ぎで止まっています。
12時までの3時間分には、これまであった悲しいこと、大半は難病だけでなく(笑)、両親の離婚や性犯罪被害、自殺願望や自傷行為などが詰まっています。
こういったことを全て忘れて、100%ハッピーになれ、と言われても、私にはできません。 私には私なりの時計の進め方がありますから、粛々とそれをやるだけです。
たとえ、難病を抱えていなくても、12時ちょうどの時計がいくつあるんでしょう。みんな割と10時とかで止まってるんじゃないですか?
励ましの意義
人間が時計と違うところが一つだけあります。
時計は、励ましの言葉を電力に変える機能がありませんが、人間には、励ましの言葉を活力に変える能力があることです。
励ましの言葉は、我々を瞬時に前向きにさせる力はありませんが、前向きになるための活力になることがあります。
自分のペースが、正しいペース
活力と時間は、自分のペースでチャージしていいのです。
隣の時計の方が早く進んでるかもしれませんが、早い時計が正しい時計なわけじゃないですよね。 自分のペースで進む時計が、自分の人生にとって正しい時計なんだと思います。
私の時計は、今、正確な時刻を指しています。そして私は今、多分12時の時計を持っていた時よりも圧倒的に幸せです。 6時の時計を9時まで進めた経験は、絶対に手放したくありません。私は賢くなったし、優しくなったし、強くなったし、幸せとは何なのかを知ったからです。だから残りの3時間も自分で進めていきます。
それが不幸だとか、ネガティブな生き方とか、消極的な生き方とか、いつまでもくよくよ悩んでいるとか、周りからはそう見えるかもしれません。周りの方はイライラして、「3時間を進める魔法の薬」を渡そうとしてくれるかもしれませんが、できないもんはできないからね!自分のペースで行くだけです。
あなたの時計は、今何時ですか?